色のない世界。【上】
男性は最初は驚いていたが、やがて「了解しました」と言って重文様にお辞儀をした。
重文様はそれに満足したのかそそくさと部屋を出て行った。
扉がゆっくりと閉まった。
そして部屋の中には倒れた私と凱斗という男性だけ。
重文様が出て行ったのを確認すると、男性は私に駆け寄ってきた。
「涼音!大丈夫か、涼音!?」
勢いよく抱き上げられて、腹が痛んだ。
きっと肋が折れたのだろう。
腹を触ってみる。
1、2本ってところだ。
「頬もこんなに腫れて…!どうして涼音ばかり…!」
耳元で騒がれてうるさい。
これくらいの傷どうってことないのに。
「…うるさい。父親に戻るといつもこうなんだから…」
ため息しかでない。
仕事モードと父親モードで変わりすぎだ。