色のない世界。【上】
そんなことを考えているとお父さんに抱き締められた。
「お前は父さんの大事な愛娘なんだ。お願いだから、無茶をするな。娘の傷つく姿など父さんは見たくない。勿論、母さんだって同じことを言う筈だ」
折れた肋が抱き締められてることによって痛む。
こんなとこ重文様に見られたら親子共々傷つくだろう。
でも力が上手く入らなくてお父さんを離せない。
私は何て弱いんだろう。
たった1人じゃ、美桜様を守れない。
1人で反発しても美桜様の世界を変えることができない。
こんな小さな手では美桜様1人守れない、守るだけの"道具"。
ふっ、ほんとにただの"道具"ね、私は。
今美桜様を自由に出来るのはきっと私じゃない。
脳裏に思い浮かんだのは、美桜様と接触した金髪の少年。
私は桜の木の影から見た。
愛おしそうに美桜様を見つめる目。
そしてどこか強い目つき。