色のない世界。【上】
傷…お母様からは身体が傷つくことって聞いたことがある。血が出てきて痛いって。
"痛い"も感情なのかな…
「…"痛い"ですか?その傷は…」
「…は?」
男性はポカンと口を開けて私を見た。
私はイスから立ち上がり、男性に近づく。
「…"痛い"とはどういうものなのですか?感情なのですか?どういうのが"痛い"というのですか?」
ぐぐっと男性に迫る。
男性は私が近づくたび少しずつ身体を後ろへ引いていく。
私はジッと男性を見つめる。
ハッと我に返る。
見ず知らずの私にいきなりこんなに迫られて驚いてる。
私はゆっくり男性から離れた。
「…いきなりごめんなさい。"感情"というものを知らなくて…」
「…感情を…知らない…!?」
男性がまた驚いてる。
無理もない、"感情"を知らない人なんているわけないって考えてる"外の世界"の人だから。