色のない世界。【上】




俺は何も言えずに美桜の頭を頬を撫でる。




美桜は何も言わずにされるがまま。




俺が何か言うのを待っているのか、俺が考えているのが分かるのか美桜は黙ったまま。




「美桜、お前はどうして自分で自分を"道具"と言うんだ?」




口から咄嗟に出たのはこれだった。




美桜はキョトンとした目で俺を見ている。
そして平然と答える。




「私は産まれてから"道具"だと刻み込まれてきましたから。つい言ってしまうというか、自分を"道具"と自覚させるために言っているようなものです」




美桜はふっと笑った。
でもその笑顔はいつもの笑顔じゃなくて、出会った頃の色のない笑顔。



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