色のない世界。【上】
そこに誰かいる。
でも出て来ようとはしてない。
俺が答えるまで出て来ない気か。
「…美桜が死んでというのなら何も言わずに死んでやる」
「…では美桜様より先に死にそうになったら?」
答えてすぐに質問がきた。
何なんだ、こいつは。
俺をどうしたい。
長い襟巻きが木の影から出ている。
誰なんだ、ほんとに。
「…美桜より先に死ぬなんて絶対しねぇ。死ぬなら一緒、生きるのも一緒だ」
答えにすぐ質問が返ってくることはなかった。
その代わりにふっと笑う声が聞こえた。
そして木の影から姿を現したのは、長い襟巻きをしたスーツ姿の女。
「…貴様に美桜様を助けて欲しい」
美桜から聞くはずだった助けてという言葉は、見ず知らずの女から聞くこととなった。
【side end】