色のない世界。【上】




「…湊はほっといていいわ、龍之介。あの子はいつもああなんだから」




綺麗な腰近くまである黒髪をした女が龍之介の席から一つ空けてイスに座った。




女のイスを後ろに引いたのは藍色の髪をしたスーツ姿の男。




九条院家第1女、九条院 絵里香(くじょういん えりか)。
その背後の護衛人、柊 真(ひいらぎ しん)。




絵里香は湊を見ることなく目を閉じている。
それを見た湊は何も言わず、ただチッと舌打ちをした。




「あらぁ~?絵里香お姉様、今日は一段と機嫌が悪いのねぇ~?」




部屋に入って来たのは扇子で口元を隠した明るい茶髪の女。
口は見えないが目元はニヤリと笑っている。




女の背後にはスーツのズボンをショートパンツにした、若い護衛人。




九条院家第2女、九条院 結子(くじょういん ゆいこ)。
その背後の護衛人、柊 哉(ひいらぎ かな)。




結子の姿を見た絵里香は目を開いて結子を睨んだ。



< 89 / 268 >

この作品をシェア

pagetop