色のない世界。【上】




でも私は"感情"を知らない。
だって私は…




「…私は外に出ることのない、繁栄のための"道具"ですから」




真っ直ぐに男性を見る。
男性はさっきから驚いたまま。




私にはできない表情。
というかすることのない表情。




「…お前…」




男性が口を開いた瞬間、数人のメイド達の足音が聞こえてきた。




少し騒ぎすぎてしまったかな…




「早く逃げて!見つかると殺されます!」




私は無理矢理、男性を窓の外へ出す。




この部屋は許可の降りた者しか入ることができないと涼音から聞いた。




勝手に侵入した者は例え親族だろうとメイドに処分される。




殺されるところは見たことないけど、親族が侵入者が捕まるのを何度も見てきた。



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