色のない世界。【上】
それを見た結子は決して怯まず、逆に笑みを深めた。
「あら、怖い。どうしてそんなに不機嫌なの?お姉様。あなたは"黒女"ではないのだから不機嫌になる必要もないじゃない」
護衛人の哉が引いたイスに笑いながら座る。
絵里香は結子の言葉に苦しそうな表情を見せた。
「大丈夫ですか、絵里香様」と護衛人の真が絵里香の肩を支えた。
それをただ結子は睨むように見ていた。
結子の言った"黒女"という言葉に、湊が机の上に乗せている足を組み直して反応した。
「あ、やっぱ今日はあの"道具"についての会議なのか」
湊はニヤリと不快な笑みを浮かべた。
結子は扇子を閉じて、目線を絵里香から湊に切り換えた。
「当然よ。美桜の解禁日まであと一週間もないのよぉ?その話になるのは必然よ。あたし女だから黒女の導に関係ないし、この会議出る意味ないわよねぇ~。ほんと無駄!」
結子は少々苛立ちながら、扇子を開いたり閉じたりしていた。
護衛人の哉は何も言わずに目を閉じている。
「結子姉さんの言う通りだ。こんな会議、やる意味すらねぇよ。どうせあの"道具"は俺のものになるんだからよ」
くっくっくっ
湊は何かが面白かったのかまた目頭を押さえて笑っている。
絵里香は目を閉じて平静を装っているが、眉にシワを寄せてどこか不愉快そうにしている。