色のない世界。【上】
龍之介も不快そうに眉間にシワを寄せているが、何も言わない。
それを良しとしたのか湊は机に突っ伏している銀髪の男を見た。
「陽平(ようへい)もいつもああやって寝てるからな、この会議やっても意味ねーよなぁ!」
湊は男に聞こえるように態と大声で言った。
だが男はピクリとも反応しない。
男の背後にいる手を前で握っているスーツ姿の女は少しピクリと動いた気がした。
九条院家第5男、九条院 陽平(くじょういん ようへい)。
その背後の護衛人、柊 凪沙(ひいらぎ なぎさ)。
しばらく湊は陽平を睨んでいたが、ビクともしない陽平に飽きてチッと舌打ちをした。
それを見た結子はクスクスと笑った。
「やめなさいよ、湊。陽平は何を言ったって寝てるだけなんだから。九条院家の後継人に興味なんてないのよ、だから死人同然。あたしが男だったら代わって欲しいくらいだわ」
結子は扇子で口元を隠した。
そして陽平を睨んでいた。
そんな結子を陽平の護衛人の凪沙は、チラッと一瞬だけ見たがすぐに前を向いた。
結子の言葉に湊はくっくっくっと笑っている。