色のない世界。【上】
「…美桜の"解禁日"は予定通りに決めた。それ以降に手を出すのは自由だが、"解禁日"以前に手を出した者は後継人の権利を失う」
重文の言葉に兄弟達は真剣な顔つきをした。
そして口を開いたのは結子だった。
「女であるあたしと絵里香お姉様はどうしたら後継人になれますか、お父様?」
結子は扇子で目から下を隠し、重文を見つめた。
重文は真っ直ぐに結子を見つめ、口角を上げた。
「そんなもの、九条院の血の通った男を利用すればいい。それならいくらでもいるだろう」
その言い方は九条院家の親戚を道具だと言っているようだった。
でも結子は満足したのか扇子を閉じてニヤリと笑った。
家族会議はこうして会議が開始するのに30分以上かかったのに、始まって終わるのに10分も経たなかった。
こうして重文の言葉により始まった、後継者争い。
だがその歯車が狂う出来事は既に鷹沢組で始まっていた…