鍵盤になりたくて
演奏が終わって余韻に浸る前に要さんは関係者以外立ち入り禁止と書かれたスタッフルームに消えていく。
そこまでに行く間、話しかけられたりするけれど要さんは長居する事はない。
いつも、私はそれを見送ってマスターと会話して帰る。
でも今日は違う。
「行きますか?」
「はい」
「じゃ、案内しますよ」
マスターは隣にいたバーテンダーに声をかけてから、私をスタッフルームまで案内してくれて。
「要、ちょっといいか?」
なんてノックしながら扉の向こうにいる要さんに聞いた。
「ああ、なに」
要さんの声だ…!
ドキドキしながら花束をしっかり持って、マスターと一緒にスタッフルームに踏み入れた。