鍵盤になりたくて
02
あの日から一週間後。
私はいつも通り職場を出てバーに向かっていた。
ううん、いつもとは違った。
「それはプレゼントかな?」
私が抱える花束を見てそう言ったマスターにこくりと頷く。
ニュースで見たから…、要さんが大きな仕事をするって。
有名な映画に要さんの楽曲が使われる事になったというニュースを見て、自分まで嬉しくなった私は花束をプレゼントしたくなった。
迷惑かな?と思ったりもしたけれどピアノの演奏会には花束を渡す人もいるし、最悪渡せなくても自分の部屋に飾ればいい。
だからバーに向かう前に花屋に寄ってこの花束を買ってやってきた。
「迷惑とか」
「そんな事はないですよ。もしよかったら後で裏で要に会いますか?」