精霊の謳姫



「ノヴァ…、」


突然口を開いたリディアを、
ノヴァは水面越しに見つめていた。


しかし一瞬の隙にリディアは緩んだノヴァの手から逃れ、意を決して噴水を背に彼と向き合った。



至近距離で、彼の青い瞳と視線が合う。



「ノヴァ。
騒いでしまって…それと、
馬鹿って言って、ごめんなさい…。」


「…っ!」




悲しげな表情で真摯に謝罪の言葉を告げるリディアに、
惑わされたのはノヴァの方で…



「っ…馬鹿じゃないの…!」




咄嗟に彼女から身を離して、目を逸らす。

血が上っていく感覚が手に取るように分かった。

いつもは毒づく口許を、隠すようにして顔を背ける。



< 22 / 74 >

この作品をシェア

pagetop