精霊の謳姫
呼びかけられたノヴァの青い片目が、
不機嫌そうにリディアを見つめた。
哀愁を帯びた翡翠の瞳は、窓の向こう側の景色だけを映している。
「一度…一度だけでいいの。
私、外に出てみたい。」
そう懇願する少女は、
さながら籠の鳥のようであった。
穏やかだった一室には、微かに鋭い空気が漂う。
しかしそれに気づかない少女は、憂いを帯びた表情で外をぼんやりと眺めている。
思いの丈が極限に近いところまで来ているのだと、遠くを見つめる澄んだその瞳が強く物語っていた。
不機嫌そうだった少年も、今は感情の読めない表情で、スッとその青を閉じる。
そして、少年は___
「いいよ。」
_____…鳥籠の鍵を外す。
「ノヴァ様…っ!」
「ただし、
リディアが成人の日を迎えたらね。
ちゃんとそれなりの知識と落ち着きが備わったら、何処へでも連れて行ってあげるよ。」
ふっ、といつもの悪戯な笑みを浮かべる彼だったが、この日はどこか威勢がないように見えた。
騎士の方はぐっと口を噤み、困ったような表情で少年を見ている。
そして、少女は…__
不満気な、納得いかないとでも言いたげな様子で柳眉を寄せていた…。