精霊の謳姫
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その夜。

例によって山のように出た課題を少し終わらせ、
そろそろベッドに潜ろうかという時だった。



「ッ?!」



ーーそれはあまりに突然のことで。



腰に回された何者かの腕に動きを封じられると、驚く間もないほど素早く口許を塞がれた。

高い所から落ちるような、
ひやりとした感覚が身体を奔る。


物音一つしなかった。
ドアの外にはアレンがいた筈だ。
一体どこから入って来たのだろう。


パニックを起こしている頭でなんとか
助けを呼ぼうとした刹那、



「…鬱陶しいから、騒がないでくれる?」



近く耳元で囁かれたその声にピタリと動きを止めたリディアは、頭の中が真っ白になった。

紛れもない、その声は…


(ノヴァ!?)


口許にあてられた手に力がこもる。

困惑したリディアが大人しくなったのを見計らうと、態勢はそのままに彼は小声で語りかけた。



「これから僕が聞く事にだけ、答えて。
質問はなし。…いい?」



それは”了承”を請うものではなく、あくまで”確認”。
ノーという選択肢は元より与えられていない。


未だ状況が全く理解出来ていないリディアだったが、その声音から彼が冗談のつもりでやっている訳ではないということだけは分かった。


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