愛しのご主人様
「まだ、ももりいるんだ」
ももりを抱き上げると尻尾をパタパタと振るわせた。
「本当に。あと、コイツだけなんだよなぁ~」
「俺もう、ももり飼っちゃおうかなぁ~」
「そう……だね………」
すっと、私からももりを抜く。
ももりはさらにブンブンと尻尾を振った。
一瞬、ドキリとした。
分かってる。
私じゃない。ももりのことだって。
胸が騒めく。
彼に抱っこされて嬉しそうなももり。
私だって彼に抱きしめられたい。
じわじわと湧いてくる醜い感情。
分かってる。
子犬に嫉妬してるとか本当バカみたいなんだけど……
それぐらい彼のことが好きなんだ。
私がこの子犬だったらよかったのに……
「私そろそろ、帰るね」
今すぐにでも零れ落ちそうな涙をぐっと堪える。
彼に見られたくなくて、さっとその場を去った。