愛しのご主人様



今日もまた、あの場所へ



いつもの定位置にやっぱり彼はいた。



けれど、子犬の影が見えない。



近くまで来て彼が私服だったことに気がつく。



「ももりは?」


「無事、飼い手が見つかったよ」


「そっか。よかった」



ほっと一安心。


幸せにね、ももり。



ふいに視線を向けると、彼は遠い目をしていた。



「子犬としては飼い主が見つかって幸せなんだろうけど。やっぱ、寂しいな」


「そうだね……」



確かに私が初めてここに来た時は、まだたくさんの子犬がいた。


キャンキャン吠えて、うるさいほどに。


なのに、今はもう一匹としていない。



「俺もペット欲しくなってきたな」



すっと、私の手が取られた。



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