エターナル・フロンティア~前編~
そのシャトルの中に設置されている椅子に腰を下ろしているのは、十代後半の少女。透き通る青色の髪を長く伸ばし、可愛らしい顔立ちと黒い双眸が印象的で、何処か「お嬢様」という雰囲気が漂う。
少女が向けている視線の先で美しく輝いている青い物体は、シャトルの目的地である惑星レミエル。彼女にとって数週間ぶりの帰郷は戸惑いの方が強く、同時に動揺がないわけでもない。
(結局、予定よりオーバーしてしまったわ。卒論、大丈夫かな? 時間、足りればいいけど)
少女は自身の友人達と共に、別の惑星でつかの間の旅行を楽しんできた。卒業記念という名目で、三週間ほど有名なリゾート惑星に滞在。しかし遊びすぎが原因で当初予定の三週間を大幅に超してしまい、結局帰るのは予定していた日にちより四日過ぎた今日になってしまった。
(卒論間に合わなかったら、どうせ私が手伝うことになると思うけど……やっぱり、嫌だわ)
自分の身に訪れる不幸を呪うのだが、毎度のように手伝っているので少女は冷静に受け止めていた。毎度毎度、彼女達は少女と同じテーマを選ぶ。その訳は「手伝って欲しいから」といういい加減な理由で、最初から自分で努力することを放棄しているといってもいい。
結果、何度も少女とテーマが同じだと教授から注意を受けるも、直す様子はない。いい人間関係を保つということで少女もこれに付いては無言を突き通し、何より友人達に面と向かって言える性格ではない。そのことをわかっていながら行っているのだから、質が悪い。
(馬鹿かも……)
教授達もそのことを知っているので度々注意を行うが全くといって効き目は見られず、教授達も呆れている。彼女達は「今楽をしていると将来が大変になってしまう」という考えを持ち合わせていないのだろう、現に予定より四日延びたのも彼女達に原因があったからだ。
今は少女に手伝って貰っているが、卒業した後もそれが行えるとは限らない。それでいて「手伝って」と言うのは聊か無理難題が多く「友人」という立場を上手く使っているといってもいい。勿論、それくらいはわかっているのだが、少女は相変わらず沈黙を続けている。
「そうだ」
ふと、何かを思い出したのか少女は椅子から腰を上げると、シャトルの一番奥のエリアへ向かうことにする。彼女が向かった場所は展望エリアのような構造となっており、黒一色の宇宙空間が一望することができ、乗客に解放された憩いの場所といってもいい場所だった。