エターナル・フロンティア~前編~
カディオはイリアに、関して何も言わなかった。正しいと思っていたことが逆の作用を齎し相手を怒らしてしまうこともあるので、此処は適当に相槌を打っているのが一番と彼は判断する。
「幼馴染って、いたりする?」
「何だよ、いきなり」
「いや、いたら会ってみたいと思って」
「残念ながら、俺にはいないぞ。遊び友達、いたけどな」
「へえ、友達はいたんだ」
「何だよ、その言い方」
「何でもない」
ソラはフッと笑みを見せると、それ以上は続けなかった。カディオに遊び友達がいたということは、はじめて知った事実。彼はソラと同じように、自分の過去を話そうとはしない。そこに何か問題があるというわけではなく、話すに値する内容でないからと本人は語る。
「で、さっきの内容だけどマジか?」
「お前に嘘を言ってどうする」
「いやー、黙っているつもりだったけど無理だ。第一印象と、あまりにも違いすぎる。だから、嘘だと言ってほしかった」
カディオは「どのような女性でも優しく」というのがモットーであるが、あまりにも常識離れした相手の場合は、考えを改める。そして彼がイリアに持つ印象は、かなり良かった。
「オレだけだよ」
「まあ、他人にやられたら困るな」
「そうだね。でも、嫌いじゃないよ」
「おっ! 優しい」
自分自身に厳しい一面を持つソラは他人にそれを強要する時があるが、決して押し付けではない。それが相手の為だと思って行うことであるが、それを理解してくれるのは仲間のみ。だからといって、本気でイリアは批判していない。彼女は彼女なりの生き方をしているのだから。
「必然的に、厳しくもなるよ」
「イリアちゃんは、知っているのか?」
「知らない。話してもいないし。それに、話す必要もない」
ソラの過去を掘り起こしてしまうと判断したカディオは咳払いをすると、暗い話を横に逸らす。このまま同じ話を続けると、互いの気分が滅入ってしまう。暗い話の逆といえば明るい話。そう考えたカディオはソラを驚かす言葉を口にするが、爆弾発言に等しいものだった。