エターナル・フロンティア~前編~
「女っていいよな」
次の瞬間、ソラの身体が硬直する。そして何の前触れもなく言われた言葉に返す言葉が見付からず、不信感たっぷりの視線を送る。一方カディオは瞳を輝かせ、真剣さをアピールしはじめた。
「……気楽だね」
「俺は、真剣さ。この恋も、実らしてやる」
誰かに、恋心を抱く。それは当たり前の行為であり必然的なものだが、全ての者にそれが当て嵌まるとは限らない。ソラが一番そのことがわかっているので、口に出すことはしない。
カディオはソラの気持ちを察したのか、口調は先程と変わらない。此処でソラを同情するのは簡単だが、それは本当の友情ではない。知っていながら、知らないふりをする。それは難しいことであるが、それができる者は真の友人であろう。まさにカディオは、それができた。
時と場合によって、使い分けをしないといけない。カディオは、見事にそれを使い分けている。無論、ソラはそれに気付いているが感謝を言葉で表すことはしないが、心の中は嬉しかった。
カディオはイリアに関しての話の時は、同調の意志を表す。ソラ自身のことになると話の流れを変え、知らないフリを行なう。ソラが思っている以上に、曲者の一面を有しているカディオ。「ガハハハ」と笑うその表情の裏に何を思っているのか、時々わからないことがある。
だが、良き友人というのは間違いない。それは変わらず、この先も続いていくだろう。二人はその関係を強く望んでおり、何でも話すことができる素晴らしい男同士の友情であった。
「今回で、連戦連破は終わりだ」
「あれ? この前、一回は成功したと言っていなかったか。あれは、嘘だったのかよ。お前は……」
「いや、成功したと思っていた。でも、後でふられたんだよ。本当に、最初はわからなかったんだ」
「お前が、気付かなかっただけだよ」
友人関係に関しては真面目な一面を見せるカディオであったが、恋愛に関しては「恋多き男」という名前が付けられている。今回の一目惚れといい、意外にも告白回数は多かった。
毎回全力投球で挑戦するが、成功した試しはない。流石に何回もふられるわけにはいかないと頑張っているようだが、果たして性交するかどうか。また、カディオがこのように頑張っていることを知っているのは、実はごく一部。表立って表れないだけであって、影では苦労し続ける。