エターナル・フロンティア~前編~
「な、何をする」
「イリアの真似」
その言葉に、カディオは反論できないでいた。そして痛む腹を撫でつつソラを一瞥すると、幼馴染との微妙な関係に同情する。異性同士の幼馴染関係。一般的にそれから恋愛感情に発展すると思われるが、ソラとイリアにはそれは見られない。寧ろ、存在してはいけない。
現在の状況を不憫に思うカディオであったが、その理由は理解している。それはソラを含め、彼等が置かれている状況が悪過ぎる。もし世論が緩やかな感情を抱いているとしたら、可能性は高い。
だが、それは難しい。
友人関係とはいえ、カディオは他人。その人に幼馴染の性格を暴露することは、常識的に考えて失礼そのもの。しかしソラは躊躇うことはなく、それだけ自身が置かれている立場とイリアとの関係を嘆いているのだ。そしてそれを隠そうと時折嫌味を混ぜるが、実に痛々しい。
「帰ろうか……」
「そうしてくれると、嬉しいな」
「マジ?」
「うん。マジ」
「そ、そうか」
「嘘は、言わない」
「そうだよな」
その後、二人の間に会話はない。このように素直に返事を返されてしまうと、反論の言葉が見付からない。いくら言葉で日頃の鬱憤を話していっても、やはり心の中は違うとカディオは思っていた。だが、厳しい言葉を言うことはせず、それを言ったらソラを傷付けてしまう。
「いや、行く」
「……そうか」
「絶対に、行く」
自分自身に言い聞かせているのかカディオは大声で叫ぶと、更に速度を上げアカデミーへ向かった。法廷速度以上のスピードだが、運転テクニックが予想以上に高いカディオ。突然の出来事に目を丸くし、驚いていたソラであったが「カディオなら平気」と、安心する。
何故、これほどまで頑張るのか。ソラは腕を組むと、思考を働かせていく。その時、ひとつの内容が思い付く。それは好きだという相手にふられた場合、新しい相手を見付けようとしている。カディオの性格を考えるとその点は難しいように思え、それだけだらしない。