エターナル・フロンティア~前編~

「な、何だよ」

「何でもない」

「そ、そうか。よし、ソラが何と言おうとも、俺はアカデミーに行ってやる。絶対に、行くぞ」

 そのように宣言したところで、現在車を運転しているのはカディオ。つまり本人の意思で自由に向かう場所を選択できるので、このようにいちいち宣言されてもソラは反応に困ってしまう。

 どうやら「一応、断りを入れておく」という気持ちがあったのだろう、カディオの額には幾つもの汗が滲み出ていた。その後特に会話がないまま、車はアカデミーに向かって走っていく。


◇◆◇◆◇◆


 卒論が進まないらしく、パソコンの画面を目の前にイリアは渋い表情を作っていた。図書室に置かれている資料のお陰で、提出できるギリギリのラインまで書くことができたが、問題は内容が薄っぺら。見る人がこれを見れば、図書室で調べたということがわかってしまう。

 やはり現物を見て調査するのが、一番大切なことだろう。しかし今のイリアは金欠に悩まされているので、それを行うことができない。ソラに両親はケチだからと言っていたイリアであるが、本当のところは「プライドが許さない」という、変に強情な一面が影響している。

「イリア終わった?」

 クラスメイトの質問に無言で首を横に振ると、溜息をつく。このまま卒論を提出しても構わない。それに将来、科学者として生活していくという信念があるので、中途半端は許されない。

 すると、クラスメイトの一人がパソコンの画面を覗き見る。どうやらイリアが書いている卒論が気になるらしく、一通り卒論を読み終えると予想以上のでき栄えに驚きの表情を作る。

「よく書けているじゃない」

「そんなことは……」

「この内容じゃ不満なの?」

「う、うん」

 返事を返すイリアに、クラスメイトは肩を竦めていた。完璧主義とまではいかないが、イリアは研究に対して高い情熱を持っている。そのことは周囲も知っているが、ここまで強いとは思ってもみなかった。だが、科学者を目指すにはこれくらいの信念がないといけない。
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