エターナル・フロンティア~前編~
「適当に書いて、適当に提出すれば」
「そんなこと、できないわよ」
「イリアって、普段から真面目でしょ。それに真面目な人が懸命に頑張って卒業しても、努力が報われることは少ないのよ。逆にいい加減に授業を受けておきながら、有名になった人物もいるらしいわ」
クラスメイトが言っていることは、正論であった。イリアのように真面目にアカデミーに登校している生徒もいれば、そうでない生徒もいる。必要な単位と出席日数。そして卒論を提出すれば、卒業できてしまう。
こうなると、真面目な生徒が報われない。それどころか、自由に行っている生徒が得である。アカデミーは科学者を目指す者が学ぶ場所であるが、学ぶ生徒側は他の学校と何ら変わりない。
アカデミーに真面目に通う理由は。
そのように問われて、正しく返答できる者は少ない。就職活動に出席日数が関係するが、欠席が多い生徒が有名な研究所に就職したという話を聞く。よって「真面目」という言葉は古臭い。
所詮は、実力主義。そのようなことを見てきたイリアにとって、これが正しい世の中のあり方だと思っている。だからこそ卒論の手抜きはしたくないが、現実は思っている以上に厳しい。
「先程と考え方が違う」
「それは、時と場合よ。あの二人を見ていると、腹が立ってしまうの。私達が、真剣に勉強をしているというのに。彼女達は、論外よ。同じ土俵で考えては駄目。もともとやる気がないのだから」
言い訳に近い言葉であったが、イリアは頷くしかない。勿論、論外という言葉の意味はわかっていた。たとえ不真面目な態度を取っていようとも、アカデミーの生徒は懸命に勉強をしている。しかしあの二人はそれさえ怠っており、不真面目の代名詞として名前が上げられる。
「そういうことだから、これで提出しちゃうなさいよ。これだけシッカリ書いていれば、大丈夫」
「怒られるわ」
「その心配はないわよ。それにいい加減に書いている生徒は、毎年数人はいるらしいわよ。どうせ見つかって注意を受けるのは、そういう生徒に決まっているし。だから、提出しちゃいなさい」
その自信は、何処から生まれるのか。ある程度アカデミーの内情を知らなければ、無理だろう。だがこれは、広く張り巡らされたネットワークが関係していた。生徒同士のやり取りは、思った以上に情報価値が高い。重要な情報を得た場合、瞬時にネットワークによって大勢の生徒に広まっていく。