エターナル・フロンティア~前編~
無論、教授達は知らないことが多いので、裏で生徒が怪しいことをしていても気付かない。それはとても危険なことであるが、決してなくなることはない。それだけ、活用の機会が多いのだ。
イリアは、そのネットワークの一部を知っている。もし全域を知りたいと思うのなら、裏に行くしかない。裏という言葉――知らない人間が聞いたら怪しい世界だと想像してしまうが、危ない世界ではない。
「だって、私は……」
「あのことを気にしているの?」
「う、うん」
「あれは、イリアは関係ないわよ。だって行きたいと言い出したのは、あの二人なんでしょ?」
イリアが気にしている“あのこと”というのは、卒業旅行のことであった。卒業に影響がないとはいえ、休む理由として相応しいものではない。「単位と出席日数が足りている」ということで両親は賛成してくれたが、本心はどう思っているかわからない。だからこそ、卒論はきちんと提出したい。
「イリアは、被害者よ。行きたいのなら、二人で行けばいいのに。どうしてイリアを連れて行ったのかしら」
そのように言われると、連れて行かれた理由が見つからない。旅行先では構ってもらえず、気紛れで一緒に遊んでくれた。それ以外別行動に近かったので、楽しくも何もなかった。
「意味不明な行動が多いのよ」
二人の会話を聞いていたのか、同じように卒論を書いていたクラスメイトが横から口を挟む。その妙に説得力がある言葉に、周囲にいた全員が頷いた。この言葉で全てを表せるというのは、ある意味で凄いとしかいいようがない。だが逆に、単純という意味合いも含まれていた。
「そんな暗い話はそこまでにして、少し休憩しない」
「賛成! もう疲れた」
大きく伸びをし、凝り固まった肩を叩く。長時間パソコンと睨めっこをしていると、全身が疲れてしまう。イリアも休憩することに賛成すると椅子から腰を上げ、同じように伸びをした。
「皆、ディスクを持って行くのを忘れずに」
「当たり前じゃない」
他人のデータを盗むという事件が発生しているので、皆、データ管理にはピリピリしている。その事件とは、イリアのディスクが盗まれた事件のことであった。あの件以来、生徒間の貸し借りは原則禁止。貸し借りが必要な場合、余程の信頼がないとできなくなってしまった。