エターナル・フロンティア~前編~
やはり、相手の反応が気になってしまう。イリアは優しいように見えて痛い一面を有しているので、笑いは免れない。心配してくれるのならそれでいいが、本気に笑われたらへこんでしまう。
「部外者の立ち入りは、OKさ」
「関係者の場合だろ」
「様々な研究を行っている場所だ、怪しまれることはない。俺達は、関係者だと偽ればいい」
カディオの楽観的な考えに、ソラは「やはり」という気持ちを表情で表すと、気楽な考えに嘆いてしまう。もう少しマシな考えであると期待していたが、予想通りに期待を裏切った。
ソラは肩を竦めると、渋々ながら下車する。このまま押問答を繰り返しても、埒が明かない。こうなったら、覚悟するしかなかった。イリアに会う――ソラは激しく気が重かった。
「おっ! やっと行く気に」
「お前の付き添いということで行く」
「素直じゃないな」
真剣に返事を返すソラにカディオは冗談だと言うが、冗談には聞こえない。カディオの場合、どれが冗談なのか区別が付き難い。だから時として、全部が冗談だと捉えられてしまう。
それに、真剣な場面であろうと真顔で冗談を言う。本人は本気で言っているつもりはないようだが、いかんせん不真面目な部分が目立つ。これに真面目な一面が加われば、少しは信頼度が増すだろう。根本的な部分が不真面目なので、思ったように修正が行き届かない。
「悪い悪い」
「軽いよ」
「いいじゃないか。これが、俺だ」
「まあ、そうかもしれない」
カディオの性格は出会った当初と変わっていなかったので、ソラは半分諦めていた。そして反論するのも疲れてしまったのが実情であって、同時にこれはこれで面白い部分もあった。
アカデミーの敷地は、予想以上の面積を有していた。建ち並ぶ建物はどれも同じような造りで、どの建物が校舎なのか外見だけでは判別できなかった。困ったソラはカディオに案内を頼もうとするが「嫌だ」と、即答されてしまう。どうやら、互いに迷子になってしまったらしい。