エターナル・フロンティア~前編~
「来たことがあると、言っていたよな」
「あの時は、付き添いがいたんだよ。そんなことより、ソラはどうなんだ? 幼馴染が通っているんだろ」
「残念ながら、中には入ったことはない」
早くも問題にぶち当たる二人。これもアバウトな計画がいけなかったのだろう、このまま一箇所に立ち尽くしていると不審者と思われてしまう。やはりカディオの計画には、欠点があった。
このままではいけないと、ソラは案内板を探しはじめる。このような広い敷地を有している場所には、必ず案内板が設置されている。それを見れば、何処に校舎があるのか一目瞭然だ。
共に案内板を探してもらおうと、ソラはカディオがいる方向に視線を向ける。その瞬間、ソラの怒鳴り声が響き渡った。何とカディオが、アカデミーの女子生徒をナンパしていたのだ。
「素敵な女性を見かけたから、ついつい」
「……何処かで聞いたような台詞だな」
ソラの怒りの形相に驚いたのか、女子生徒は身体を震わせながら怖がっていた。おどおどとした態度でソラとカディオを交互に見ると、急に悲鳴を上げその場から立ち去ってしまう。
その後姿に声を掛けようとしたソラであったが、女子生徒の姿は遥か彼方にあった。その時、周囲からひそひそ話が聞こえてくる。見れば、アカデミーの生徒が二人の噂話をしていた。
「……お前の所為だ」
「俺は、感情のままに動いただけだ」
「それが、余計なんだよ」
これにより、完璧に不審人物だと思われてしまった。多分「怪しい人物に声を掛けられた」と、報告されるだろう。こうなれば、捕まったも同然。しかしカディオは、全く気にしていない。
「捕まったら、お前を売ってやる」
「そ、それはないぞ」
「原因を作った奴が何を言う」
「まあ、そうだけど」
「自覚があるのなら、大人しくしていてほしい」
いつものカディオであったら簡単に片付けてしまうが、今回は違う。「不審者として捕まった」と通報されてしまったら、上から何を言われるか。軽い処分で済めばいいのだが、何かと厳しい職場。後々が恐ろしい。何より軍は規律を乱す者を嫌うので、処分は重いものになる。