エターナル・フロンティア~前編~

「どうする? 不審者君」

「それは、お互い様だろ」

「オレは、無罪だ。ナンパをしていた、お前が悪い。責任を取れ。オレを巻き込むな。大事になったら、どうする」

「その時は、その時だ」

 危機感が感じられない言葉に、ソラは切れる寸前であった。そもそもカディオがナンパなどしなければ、このようなことにならなかった。また、好きな女性がいるというのに軽い性格。いつか痛い目に遭うと思っていたソラであったが、まさかそれに巻き込まれるとは――まさに、最悪であった。

「行くぞ」

「えっ! 俺達は不審者じゃ……」

「こんな場所に、いつまでもいられるか」

 ソラの言葉が示しているように、数多くの生徒が此方に視線を送り何やら話している。図太い神経の持ち主のカディオであったが、流石にこの光景には驚いた様子。互いに目で合図を送ると二人はその場から逃げ出していたが、目撃していた生徒の噂話が消えることはなかった。




「あれ? 此処って一体」

 目的を定めずに走っていたことにより、どの方向へ向かって走っていたのかわからなくなってしまう。此処はアカデミーの敷地内ということ以外、情報はない。何か目印になるものがないかと探すも、それらしき物は存在しない。どうやら、本当に迷子になってしまった。

「どうする」

「オレに聞かれたって、わからないよ」

 この一体は先程とは違い、緑が多くとても静かな場所だった。アカデミーの関係者に駐車場の場所を聞こうと思うも、人が全く歩いていない。その時、カディオから「適当に歩き適当に探す」という提案がされるが、ソラ即答で却下した。そのようなことをしたら、更に迷子になってしまう。

「本当に、誰かいないのかな」

「そう都合がいいことは、ないよ」

「それは、わからないぞ」

 カディオは身体を回転させながら、周囲に誰かがいないか探していく。ふとその時、何かとぶつかってしまう。だが後ろ向きであった為に、何ぶつかったのかはわからない。カディオは慌てて振り返ると、ぶつかった対象を見る。その瞬間、カディオの瞳がキラキラと輝いた。
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