エターナル・フロンティア~前編~
カディオは、能力者に理解を持っているといっても、ソラの心の中までは知らない。それに、ユアンという人物のことも――それに、ソラは何も話してはいない。それだというのに「理解してほしい」というのは、無理な相談であった。人間は、時として感情の方が勝る。
カディオが知っているユアンは、所詮表の顔。科学者としての裏の一面を知っているのは、ごく一部。よってカディオが見せた態度に文句をつけるのは御門違いだがユアンを尊敬することは、気に入らない。カディオだけは……そう思っていた為、ソラは悔しいと思う。
「顔色が悪いな」
「……そんなことは」
「具合が悪いのなら、診てもらった方がいいぞ」
「そうだな。彼の言うことは、正しい」
心配しているという素振りを見せつつ言った言葉であったが、逆にソラの感情を逆撫でしてしまう。科学者に診てもらうということは、即ち身体を研究されるに等しい。無論、カディオはそのことを知っている。しかし知っていながら、態とそのように言う。それは、ソラの身体を心配していたからだ。何故このような言い方になってしまうかは、不器用な証拠だ。
「また、今度……」
「そう言って、先延ばししている」
我儘を言い続けるソラに、ユアンは肩を竦めるしかできなかった。そしてゆっくりとした足取りでソラの側に近付くと、何やら耳打ちをした。その内容に身体を震わせ、反射的にユアンとの間に距離を作る。彼の顔を凝視しているソラの表情は、明らかに不快そのものであった。
「冗談だ」
「冗談でも、いい加減にしてください」
素直な反応に、ユアンは声を上げて笑う。「君のことが好きだ」囁かれた内容は、このようなものであった。同性からの愛の告白と取ってしまったソラはご立腹だったが、ユアンは笑うだけ。
「な、何だ?」
「カディオには、関係ないよ」
「友人は、大切にしないとね」
「そうだぞ」
ユアンの言葉が後押しとなったのか、カディオは腰に手を当てつつ抗議していた。その友人の姿にソラは溜息をつくと、此処にいる理由を尋ねる。ソラにとって其方の方が重要で、ただの気紛れで訪れたとは思えない。ユアンの行動のひとつひとつには、明確な理由があるからだ。