エターナル・フロンティア~前編~
冷静に考えれば父親の意見が正しく、少女は人生経験が乏しい結果、自分中心に物事を考えてしまう。確かにアカデミーの生活は、勉学と研究の両方を行なわないといけないので大変である。しかし社会に出ればそれ以上に辛い経験が待っており、自分の我儘は通じない。
真面目に授業と研究を行い普通以上の成果を収めないといけないのだが、少女は其処まで行き着いていない。中途半端な生活を送っている者が、自由で遊べる時間を求めてはいけない。彼女の父親はそのことを言い続けているのだが、長い反抗期の影響で受け入れることができないでいた。
(遊べるのは、学生の時だけだもの)
どのような人物にも学生の頃があったので娘の気持ちがわからないとは思えないが、社会で様々なことを経験し親という生き物に変化した時、人間は大幅に変わってしまうのだろう。少女は仕事を行っているサラリーマンを一瞥すると、自分の未来について考えていく。
何処かに就職をしたら、このサラリーマンと一緒になってしまうのか。今も授業と研究に追われているというのに一生それが付き纏うということになると遣る瀬無い気分になってしまうが、それは自分が選択した道。今更別の道を選ぶことは難しく、この道を突き進むしかない。
ふと、少女の名前を呼ぶ声が響く。反射的に声が聞こえた方向に視線を向ければ、目の前には少女が苦手としているアニスとディアーナが立っている。二人は少し怒ったような表情を浮かべており、この表情から察することができるのは少女を全く心配していないというもの。
「勝手にいなくならないで」
「連絡してよ」
「イリアだって、私達の気持ちがわかるでしょ。貴女がいなくなったら、此方が困るのよね」
「そう、誘拐とかされたら連絡が面倒」
「だから、私達の見える範囲にいて欲しいのよ。このシャトルも広くないんだから、いいでしょう?」
そのように言うが、彼女達はイリアと呼ばれた少女を仲間外れにしていた。それだというのにこのように心配していると言い、いい人を装う。そのいい加減な態度にイリアは何かを言い返そうとするが、途中で躊躇う。彼女達にどのような言葉も通じず、自分中心で物事考えている。
それに弾む会話を邪魔してはいけないということで、イリアは何も告げずに立ち去った。それに少しの間なら大丈夫だと思っていたが、その考えが甘いと気付く。イリアは沈黙の中で彼女達の話を聞いていると言葉は徐々に辛辣なものに変化し、言葉の端々に毒が混じる。