エターナル・フロンティア~前編~
「本当に、何かがあったら困るのよ」
「そう、取調べとか面倒なのよね」
「長時間、同じことを聞かれるし」
「特に、オヤジだったら最悪よ」
「汗臭いしね」
一方的に語られる言葉に、イリアの顔が引き攣っていく。困るというのは、何に困るというのか。それは本人達の私生活が左右されることであって、イリアには関係ないこと。それに、イリアは言い訳が苦手。しかしこのまま何も言わなければ、嫌味を言われ続けるだろう。
そう判断したイリアは、仕方なく小声で「気分転換に、散歩をしていた」ということを彼女達に伝えた。これで納得してくれ、二人は席に戻ってくれるだろう。そう高を括っていたイリアであったが、一枚も二枚も上手――というより、癖がありすぎる彼女達が納得するわけがない。
「散歩? それならそうと、言ってほしいわ。まったく、捜す身にもなってほしいものだわ」
「ご、御免」
「でも、無事だとわければいいじゃない」
「そうね。で、さっきの話の続きなんだけど――」
「そうそう、大事な話し」
「いつものお願い」
予想通り、二人は自分のことしか考えていない。その冷たい態度にイリアは、本当に友人なのか疑ってしまう。所詮、勉強やレポートを見せる関係なのだろう。「友人」という言葉を言いように使い、イリアを道具としてしか見ていない。そのように考えると、実に切ないものだ。
言いたいことを言い終えると、何事もなかったかのように二人は立ち去ってしまう。やはりはじめからイリアのことなど心配しておらず、心配している素振りを見せていただけ。この旅行に、どのような意味があったのか。ただの付添い人か、それとも、別の何かがあったのか――
今回の旅行は思い付きのままに突き進んだ結果、予定が大幅に狂ってしまった。その大きな原因は友人達のいい加減さであり、あれもこれもと無計画な行動を行ない、結局予定していた日数では納まりきれなかった。こうなると、金銭面にも多大なる影響を与えてしまう。
そうなれば、彼女達がやることはただひとつ。あまり買い物をしていないイリアにお金を貸して欲しいと相談、いやこの場合は「友人という名を利用し、貸してもらおうと計画した」が正しい。無論、断ることはできず仕方なく金を貸すことにしたが、返金は期待できない。