エターナル・フロンティア~前編~
「で、いつ会う?」
『今は、駄目か?』
「別に構わないけど」
『それじゃあ、行くぜ』
軽い口調で、カディオは返事を返す。その瞬間、玄関のドアが物凄い音で叩かれた。一体誰が――ソラは首を傾げつつ訪問者を確認すると、画面に映し出されたのはカディオだった。
「な、何でお前が……」
『実は、待っていたんだ』
電話口から聞こえてくる軽い口調に、ソラは唖然となってしまう。カディオ曰く「二時間前から待っていた」らしいが、ソラが不在だった場合、その場所で長時間待つことになっていた。
タフな一面を持っていると知っていたが、ここまでとは――ソラは二回目の溜息をつくと、ドアを開けてやることにした。するとドアが開いた瞬間、カディオの満面の笑みが飛び込んできた。
「うわ、最悪だ」
「な、何だよ」
「お前の笑顔を見るとは、思わなかったかだよ」
中に入るように進めつつ、毒を吐く。カディオはいつもの挨拶と勘違いをするが、ソラは本気だった。気持ち良い朝を台無しにされ、尚且つ気持ち悪い笑顔を見るとは……最悪としか言いようがない。
「俺の笑顔は、無敵さ」
「はいはい、わかったよ。ほら、中に入れ。いつまでも開けていると、寒いんだよ。それに、風邪をひくぞ」
カディオの台詞を軽く受け流すと、ソラはキッチンに向かう。相手は気の知れたカディオだったので、何も用意しなくていいが“一応”客人であったので、それ相応に扱わないといけない。
長い時間外にいたとなれば、身体が冷え切っている。これは自業自得なのでソラには関係ないことであったが、風邪をひかれたら見舞いに行かないといけないので、温かい飲み物を用意する。
「コーヒーでいいか?」
「おう! ミルクと砂糖たっぷりで」
あのように見えて、カディオは甘党なのである。コーヒーに使用する砂糖の量は半端ではなく、糖尿病の心配があるほどだ。しかし、毎回検査に行っても異常なし。どのような身体構造をしているのか不明だが、検査をした医師が不思議がっていたという話が残っている。