エターナル・フロンティア~前編~
そして、結末は――
「いい奴だったよ」
「ソラがそのように言うなら、そうなんだろう」
「理屈がわからない」
「まあ、いいじゃないか」
満面の表情にカディオに、ソラは思わず肩を竦めてしまう。これこそカディオらしい反応に違いないが、相手は悪気があって言ったわけではない。偽りのない言葉は、相手に伝わる。
ソラは、特に言葉を続けなかった。ただ相手に微笑を見せると、カディオに聞こえないように言葉を呟く。それはソラの感謝の言葉でもあったが、能力者という人物の言葉でもあった。
「……若くして死んだ」
「皆、そうらしいな」
「生き残っている人物は、少ない」
その言葉には、予想以上に重い。まさに、体験者しか語ることのできない内容といっていい。能力者ではないカディオが言ったところで、何ら重みなどない。ソラは、真の地獄を知っている。知っているからこそ、多くを語らない。逆に短い言葉だからこそ、真実を浮き彫りにする。
無言のまま、カディオはそれを受け止める。彼は能力者の苦しみを知っているが、真相までは知らない。だからこそ無言を貫き、ソラの言葉を聞く。理解したフリをするほど、卑しいものはない。
「寿命で死ぬわけじゃない。殺されるんだ」
殺される――それも普通に死亡するのではなく、研究の対象として死ぬ。未知の分野への知的好奇心ほど、厄介なものはない。その理由として、歯止めが利かなくなるからだ。歯止めの利かない者は突き進み、自己の満足の為に多くのモノを犠牲にすることを厭わない。
そして、彼等は殺される。
「カディオ……感謝しているよ」
「改まって、何だよ」
「オレを受け入れてくれて」
「ああ、そのことか。前にも言ったように、お前達の方が人間らしい。正直、力を持たない人間の方が怖い」
その言葉に続き、破顔を見せた。それはひとつの偽りも存在しない、本心で見せた笑顔。カディオは、ソラのことを信頼している。そしてソラも、カディオのことを信頼していた。このような関係は、現代では珍しい。それだけ能力者が生き難い世界で、全てを支配しているのは愚かな者達。