エターナル・フロンティア~前編~

「俺が守ってやる」

「うーん、不安だ」

「何だよ。こう見えて、俺は強いぞ」

 日頃から鍛えている筋肉を自慢するように、様々なポーズを見せていく。流石にこのようなことは、墓場でするものではない。そのことを注意すると、渋々とポーズを取るのを止める。

 しかし止められたことが寂しいのか、少し名残惜しそうだった。余程自分の筋肉に自信があるのだろう、機会があれは再び同じことを行っていたに違いないが、やはり場所が悪すぎる。

「残念だな。実に残念だ」

「オレは、見たくはない」

「男なら、身体を鍛える。ソラもどうだ? 身体を鍛えていると清々しくて、気分がいいぞ」

「いや、結構」

 シリアスな展開が一変、カディオのおかしな行動で明るい雰囲気へ変わっていく。逆に暗さが吹き飛んだお陰で、二人の会話が弾む。墓場で弾んだ会話は不謹慎でもあるが、沈黙を続けるよりはいい。

 そのことを喜んだのは、カディオの方であった。あの変わった筋肉自慢もそのひとつで、ソラに元気を出してもらおうと態と行ったものであった。何より友人の暗い表情など、見たくはない。

 ソラの場合、相手が気に掛けてやらなければすぐに暗い表情を作る。その背景に「能力者」だということを関係しているが、カディオにしてみれば心苦しく笑って生きていけるのなら、どんなに幸せか。

 それは多くの能力者が望むことであったが、残念ながら現実はそれを受け入れてはくれない。そう、人の考えが変わらない限りそれを望むことは難しく、彼等への迫害は長く続く。

「これだよ」

「あれ? 他に誰かが来ているな」

「多分、仲間かな」

「いいな。そういうのは」

「オレ達は、身内がいないから。だから一人一人が家族のようで、繋がりを持っている。だから……」

 最後まで、言葉が続けられることはなかった。ただ悲痛な表情を浮かべながら、友人であり仲間であった人物の名前が記されている墓に視線を落とす。悲しいという感情は湧いてこない。それは、この墓の下に誰も眠っていないからだ。そう、多くの能力者の死体は――
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