エターナル・フロンティア~前編~

「降りそうだね」

「帰るか?」

「濡れたくないし」

「今日の天気は快晴だといっていたのに、最近の気象データは当たらないことが多いな。科学も自然には敵わない」

 最近の気象の変動に、カディオは思わず毒付く。最新鋭の気象観測機と謳っていても、所詮人が造りし機械。いくら文明が発達しても、自然現象を人間が予知するのは難しいものだ。

 それを証明するかのように、今日の天気は一日晴れと言っていた。しかし空には厚い雲が覆いはじめ、今にも泣き出しそうな雰囲気であった。それに、轟く雷鳴が恐怖を増す。油断をしていれば地上に落ち被害を齎し、そうなってしまえば生き物は時として命を奪われる。

「うっ! 降ってきた」

「車のところまで、小降りでいてくれ」

 二人は駆け足で駐車場まで向かうと、急いで車の中に乗り込む。その瞬間、周囲が煙るほどの雨が降り注いだ。バケツをひっくり返したような雨とは、このようなことを言うのだろう。

 車にリズミカルに叩きつける雨音が、煩いほど響き渡る。降りしきる雨の所為で、急激に周囲の温度が下がりはじめた。カディオは車内を暖める為に暖房のスイッチを入れると、適温になるように調整していく。すると暖かい温風が広がり、徐々に車内が暖まっていった。

「降ってきたな」

「止めばいいけど」

「通り雨なら、すぐに止むぞ」

 だが言葉とは裏腹に、雨脚は強まっていく。それだけではない。黒い雲の中に幾重にも稲妻が走り、巨大な音を打ち鳴らす。その音は車の中にいても感じることができ、人間達を驚かす。

「凄いな」

「怖くないんだ」

「おっ! ソラは怖いのか?」

「昔のことだよ」

 それは、ソラが十歳にも満たない頃の話。惑星レミエルに移り住んだ当時の昔話。今は雷など恐れることはないがあの当時、雷は恐ろしいと感じていた。何よりもこの巨大な音で眠れることができず、震えていたのを覚えている。そして鳴り止むまで父親に抱きつき、震えていた。今思えば懐かしい思い出であり、当時は怖がりだったのだとソラは苦笑してしまう。
< 189 / 580 >

この作品をシェア

pagetop