エターナル・フロンティア~前編~

「カディオは、どうだった?」

「俺か? そうだな……」

「雷は、怖くはない。お前は、精神がタフだから」

「おい! 俺だって、怖い時期はあったぞ」

「意外だ」

 ソラが持つカディオのイメージは「物事に動じない」というものであった。たとえ五歳児であったとしても、彼は平然と遊んでいるに違いない。それどころか、雷に撃たれても生き残るだろう。

 それはカディオにしてみたら、誤解もいいところ。物事に動じない性格であったとしても、雷が鳴る中で遊ぶことはできない。無論、直撃を食らえば死んでしまい、カディオは其処まで変人ではない。

「昔は、ごく普通だったぞ」

 カディオは必死に違うということを訴えてくるが、ソラは信用していない。この「ごく普通の」という言葉は曖昧で、ソラと彼の認識の違いが左右する。ソラが認識する「ごく普通」とは、大人しい少年。逆にカディオの場合は、活発で遅い時間まで遊んでいる子供を示す。

「やはり、雷の中で――」

「少しは、信じてくれ」

 そう言われたところで、信じられる要素は少なすぎる。ソラはカディオの幼少時代は知らない手前、話される内容と日頃の行動から推理するしかない。そして出された結論は、嘘ということだった。

 失恋の話を聞いてほしい為に、長時間待ち続けた人物。そのようなタフなカディオなら、雷の中でも平気だろう。色々な意味で人知を超えた存在になりかけているが、本人は認めない。

「互いに長く付き合っているのだから、少しはわかってほしいな。いや、本当に悲しいぞ俺は」

「いや、不思議なことは多い」

「ど、どこがだ」

「全部。時々、不思議な踊りをするあたりなど」

 そのことが、ソラにとって許せなかった。その他のことは我慢できるが、所構わず踊るあれは精神的に悪い。殴って黙らせるという方法もあったが、流石に何回も殴るわけにはいかない。

 このように見えてカディオは友人であり、それにリンゴを片手で割れる握力の持ち主。下手に攻撃をして反撃を食らったら、怪我をしてしまう。骨を折れただけならいいが、内臓に支障を来たしたら……それにカディオにやられたとなれば、精神的ショックは計り知れない。
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