エターナル・フロンティア~前編~
他人の卒論を真似すればいい。そのように考えていた為に、何をテーマにしていいのかわからないでいた。しかしテーマを決めたところで、最後まで仕上げられるかは不明であった。
授業を真面目に受けていなかった者が高度な知識を理解し、更に自分なりの解釈を付けて纏めるということをできるのか。そもそも、何の為にアカデミーに通っていたというのか。
最早それに明確な理由は存在せず、ただの「箔をつける」程度のものか。それ以前に、他の生徒と考え方が異なっている。レベルの高いアカデミーを楽に卒業できると考えている自体、間違っている。審議の結果次第で、卒業を間近に退学。そのような可能性も出てきた。
だが、今までの行動を考えれば、反論の余地はない。逆にあれだけの悪行を行っていながら退学にならない場合は、奇跡だ。悪い人間が得をすることはない。悪いことをした場合、同等の罰が待っている。
それが、自然の摂理だ。
(やっと開放される)
溜息をつくと、これから訪れる幸せに胸を撫で下ろす。これで、二人と付き合うことはない。イリアは卒業が決まっているが、相手は決まっていない。それに退学になったら、就職に差し支える。そして何より、イリアは就職先が決まっていた。そう、あの研究所である。
最先端の研究がしたい。
後世に、名前を残したい。
それは純粋な好奇心と、尊敬しているユアンに認めてもらいたい。やはり目指す場所は高い方がよく、両親は凄いと褒め称えている。しかし、それがプレッシャーとして圧し掛かる。
このことに関して、ソラは何と言うか。
また、どんな反応をしてくれるのか。
それが、心に引っ掛かる。
(喜んでくれるかしら)
研究所に行くということは、ソラが嫌っている者達に混じることになる。勿論、中には口に出せない研究も含まれるだろう。これにより、幼馴染の関係が崩れるのではないかと危惧する。
(後で、連絡しないと)
しかし、黙っているわけにはいかない。黙っていては、いい関係が築けないからだ。また、嘘をつき続けるのは辛い。イリアはソラの本心に気付いていないが、漂わせている雰囲気で何となくわかっている。特に「能力研究を――」と話した時、切ない表情を浮かべていた。