エターナル・フロンティア~前編~
あの表情を思い出す度に、本当に今の道を選んでよかったのかと、迷いが生じる。しかし、これは自身が選択した道。
今更、引き返せない。
その時、イリアの名前が呼ばれる。反射的に声がした方向に視線を向けると、数人の男女が此方に向かって歩いてくる。勿論、彼等は見慣れた相手で、イリアのクラスメイトだった。
「卒論、おめでとう」
「有難う。ちょっと、苦労したけど」
「そんなことないわよ。あれだけの内容、通って当たり前。もし通らなかったら、それはそれでおかしいわ。それに、今まで苦労をしてきたのだから、少しは大目に見てもらわないと」
「そうよ。イリアの苦労は、アカデミーでは有名だもの。教授達も、そのことを知っていたのかもね」
イリアを含めて集まってきた者達は卒論が合格した面々なので、誰もが晴れ晴れとした表情を浮かべている。そして残り少ないアカデミーでの生活を楽しみ、有意義な時間を過ごす。
「卒論が終わったことだし、皆で何処かへ遊びに行かないか? 折角、友人同士になったんだし」
「それ、いいわね」
「卒業してしまったら、それぞれが仕事で忙しくなってしまうしね。私は、賛成よ。行きましょう」
それは、俗に言う卒業旅行であった。長く楽しみたいのなら数泊の旅行を予定するが、残念ながら彼等はそうはいかない。いくら暇といっても、それなりの準備を行わなければいけない。
その準備というのは就職を示し、卒業が決まっている者は就職先も決まっている。目的の場所へ就職できた者もいればそうでない者もいたりするが、多くの者はこれで満足していた。
「卒業もそうだけど、就職おめでとう」
「面接、厳しかったな」
「うちの就職先の面接官、プライベートな質問ばかりしてきたわ。一体、何を考えていたのかしら」
「それ、最悪」
互いに語り合うのは、就職時の愚痴と不満。また、就職試験の時に体験した出来事を面白おかしく話しては、共に大声で笑い合った。イリアにとって彼等とこのような話をしていることが楽しく、いつまでもこの時間が続けばいいと思うが、卒業してしまえばなかなか会えない。