エターナル・フロンティア~前編~
イリアのように研究所に勤める者もいれば、名のある一流企業に就職する者もいる。そして今暮らしている場所から通える人物は少なく、多くの者達は新しく暮らす場所を見付けている。
そう考えると、イリアはいい就職先を選んだ。研究所は自宅から通える範囲で、何より顔見知りが多い。勿論上下関係は存在するが、相手が顔見知りかそうでないかの差は、意外に大きい。それに大勢のファンを持つユアンがいることは、かなりのポイントとなるだろう。
「イリアは、いいわよね」
「羨ましいわ」
「日頃の努力じゃないのか」
「頑張っていたからな」
「私も、就職したかった」
研究所勤めは、魅力的であった。科学者として道を進む者なら、誰もが憧れる就職先。それを苦労することなく就職できたことはある意味で奇跡に近いことで、お陰で毎日のように言われる。
「ああ、私も行きたかったわ」
「ラドック博士が目当てだろ?」
「勿論! それ以外に何があるの」
「女って、単純だな」
「あら、そうかしら」
それは、男にも当て嵌まっていた。相手は尊敬の対象であり、目指す目標となる人物。異性とは異なり同性の場合は、其方の視点でユアンを見る。だからこそ、両方に人気があった。
その人気の人物の下で、働くことができる。それだけで多くの者達から「羨ましい」と思われ、妬みへと変わっていく。しかしイリアはそれだけの実力を有しているので、ひいきで選ばれたのではない。
「頑張って、いずれはラドック博士の元へ」
「さあ、どうかな?」
「何よ。そういう貴方は、どうなの?」
「そんなに、ムキになるなよ」
「ムキになっていないわ」
「それが、ムキになっているんだ」
尊敬している対象への熱の入れように、男子学生は戦いてしまう。また、どうしてファンクラブが結成されたのか、間接的に理解する。同時にこれほどまでのカリスマ性を持つユアンに憧れ、どのようにしたらこれほどの人物まで成長できるのかと、本気で悩んでしまう。