エターナル・フロンティア~前編~

「卒業する前に、一度は会っておきたいわ」

「それ、私も同じ」

「見納め……ふう、自分で言って切ないわ」

 アカデミーを卒業してしまえば、二度と出会えないといって過言ではない。イリアはアカデミーとユアンは繋がりがあるので、定期的に訪れている。しかしそうでない場所に訪れることは……奇跡が起これば、有り得るだろう。だからこそ最後に一目会えないかと、彼女達は願う。

 多くの者達の必死の願いに、イリアはこのことをユアンに頼めないかどうか考え込む。周囲にいる生徒達は、イリアのクラスメイトであると同時に友人。それにあの嫌な二人から守ってくれた恩人でもあったので、その人物が困っているのを助けないわけにはいかない。

 その前に、相手の都合も考えないといけない。ユアンは忙しい身なので、このようなことに時間を割いてくれるのは不明だが、最初から諦めてはいられない。それに恩返しをしたいと、イリアは思っていた。

 このことをクラスメイトに伝えるべきだろうが、ユアンに断られ会えなかった時の落胆は想像以上に大きい。それなら、決定するまで内緒にしておいた方がいい。イリアは頭の中で計画を練ると、周囲に気付かれないように小さく頷き、帰宅したら電話をしようと決意する。

「俺は、様々な研究について聞きたい」

「夢がないわね。もっと大きく持たないと」

「なら、何がいいんだ?」

 その質問に対しビシっと中指を立てると、希望……いや、それは妄想だろう。それを口にした。

「デートする」

「それは無理だな」

「無理と決め付けないの」

 予想外の単語に、イリアは呆然と立ち尽くしてしまう。ユアンとデート――流石、妄想好きが集まるファンクラブの面々。振舞う態度も大きければ、宣言する内容も半端ではない。

 妄想から、どうしてここまで堂々と宣言できるのか――イリアは真似することはできないが、逆に羨ましいという気持ちが湧き出る。そうすれば、苦しい思いをしなくて済むのだ。

 相手への告白は、早い方がいい。頭では理解していても、実行には移すことはできない。勿論、相手は決まっている。イリアは苦しさと戦いつつ、静かにクラスメイトの話を聞き入る。すると、クラスメイトが急に話を振ってきた。それに他の者達とは異なり、イリアは有利な立場にいた存在していたからだ。
< 198 / 580 >

この作品をシェア

pagetop