エターナル・フロンティア~前編~
羨ましい。
それが、嫉妬の的となった。
しかしイリアは、何も悪いことをしてはいない。努力し続けた結果、理想の場所に就職できたのだから。勿論、クラスメイトもわかっている。わかっているが、ユアンが絡むと理性が明後日の方向へ吹っ飛ぶ。詰め寄ってくる面々に対し、イリアは苦笑を浮かべるしかない。
ふと、ファンクラブの今後について疑問が生じる。これは、アカデミーの生徒が勝手に作った団体だ。卒業後は、一体どうなってしまうのか。そのことが気になったイリアは、話を横に逸らそうと間髪いれずに尋ねる。するとそれは思った以上の効果を齎し、上手く逸らすことができた。
「そうなのよね。ファンクラブは、勿体無いわ」
「残念ながら、終わりよ」
「わかっているわ」
「卒業も、どうしよう」
「非公認で、別のクラブを作る?」
「作ってもいいけど、管理が面倒よ」
「そう思うと、何百人と管理していた人達って凄いわ。あれだけのデータを、きちんと管理しているんだもの」
彼女達の落胆は相当なもので、ファンクラブは所詮そこまでといっていい。いくらアカデミーの卒業生であったとしても、長々とひとつの事柄にしがみつくわけにもいかない。だからファンクラブの会員だった者は涙を呑んで諦め、アカデミーを巣立っていくしかない。
「でも、ファンクラブなんて凄いよな」
「芸能人並みの人気だし」
「当たり前よ。ラドック博士は、天才よ」
「そうだよな。あの能力研究を行っているんだから」
「天才って、いるものだな」
「どうすれば、あのようになれるのか……」
「生まれ持っての才能だから、仕方ない」
憧れの世界で働いているユアンに、溜息しか漏れない。望んだところで、簡単にはいくことができない世界。アカデミーの生徒の中にも挑戦した者が何人もいたが、残念ながら全滅した。
能力研究を行う場所は、ほんの一握りの天才が集まる世界。それだけで、憧れの眼差しを向けてしまう。だが、その世界がどのような世界なのか、知らない者の方が多い。彼等がどのようなことを行い、能力者をどのように扱っているのか。また、大量の血が流れている。