エターナル・フロンティア~前編~

 羨ましい。

 それが、嫉妬の的となった。

 しかしイリアは、何も悪いことをしてはいない。努力し続けた結果、理想の場所に就職できたのだから。勿論、クラスメイトもわかっている。わかっているが、ユアンが絡むと理性が明後日の方向へ吹っ飛ぶ。詰め寄ってくる面々に対し、イリアは苦笑を浮かべるしかない。

 ふと、ファンクラブの今後について疑問が生じる。これは、アカデミーの生徒が勝手に作った団体だ。卒業後は、一体どうなってしまうのか。そのことが気になったイリアは、話を横に逸らそうと間髪いれずに尋ねる。するとそれは思った以上の効果を齎し、上手く逸らすことができた。

「そうなのよね。ファンクラブは、勿体無いわ」

「残念ながら、終わりよ」

「わかっているわ」

「卒業も、どうしよう」

「非公認で、別のクラブを作る?」

「作ってもいいけど、管理が面倒よ」

「そう思うと、何百人と管理していた人達って凄いわ。あれだけのデータを、きちんと管理しているんだもの」

 彼女達の落胆は相当なもので、ファンクラブは所詮そこまでといっていい。いくらアカデミーの卒業生であったとしても、長々とひとつの事柄にしがみつくわけにもいかない。だからファンクラブの会員だった者は涙を呑んで諦め、アカデミーを巣立っていくしかない。

「でも、ファンクラブなんて凄いよな」

「芸能人並みの人気だし」

「当たり前よ。ラドック博士は、天才よ」

「そうだよな。あの能力研究を行っているんだから」

「天才って、いるものだな」

「どうすれば、あのようになれるのか……」

「生まれ持っての才能だから、仕方ない」

 憧れの世界で働いているユアンに、溜息しか漏れない。望んだところで、簡単にはいくことができない世界。アカデミーの生徒の中にも挑戦した者が何人もいたが、残念ながら全滅した。

 能力研究を行う場所は、ほんの一握りの天才が集まる世界。それだけで、憧れの眼差しを向けてしまう。だが、その世界がどのような世界なのか、知らない者の方が多い。彼等がどのようなことを行い、能力者をどのように扱っているのか。また、大量の血が流れている。
< 199 / 580 >

この作品をシェア

pagetop