エターナル・フロンティア~前編~

「ラドック博士のような人達が集まって行う研究って、どのようなことを行っているのかしら」

「力の解明とかじゃないかな」

「それしか、思いつかない。皆はどうだ?」

「普通は、そうとしか思わないよな」

「その意見に、賛成」

 その言葉に続き、全員が首を縦に振る。考えたところで、何をやっているのか想像さえ難しい。流石、優秀な科学者が集まって行っている研究。凡人が理解できるものではなく、だからこそ夢が広がっていく。

「でもな、そのような人物と会えたんだぜ。それだけでも、凄いことじゃないか。普通なら、会えないぞ」

「そうよね。私達って、運が良かったのよ」

 ユアンのことになると、殆どの者がいい意見を言う。悪口を言う者はおらず、皆が絶賛する。唯一反論する人物は彼を快く思わない人物で、その大半が力を有している者だと知る者は少ない。

「で、話は変わるけど、あの二人はどうなったの? 一部では、教授達と揉めているらしいけど」

「それ、本当よ」

「ああ、やはり卒業は無理か」

「やっぱり。元々、アカデミーに在学している理由がなかったもの。今まで在籍していたのが、不思議だったわ」

「今回の件は、あいつ等にとってはいい薬だよ。散々、他人に迷惑を掛けてきたことだし。特に、イリアは大変だったよな。本当に、ご苦労さん。これで、やっと静かに生活が送れるよな」

 それは二人に対して厳しい意見であったが、イリアに投げ掛けられたものは同情が篭められたものであった。その言葉にイリアは頷くと、思わず俯いてしまう。今までの出来事を思い出したのか、涙ぐんでしまう。嗚咽を漏らすことはなかったが、微かに肩が震えていた。

「ああ、泣かない」

「苦労したよな」

「でも、大丈夫よ」

「そう、就職先が就職先だからな」

 クラスメイトが発する温かい言葉に、イリアは嬉しそうに微笑むと大粒の涙を流す。二人は巨大な敵に等しかったが、それ以上に優しい仲間が存在した。そのことを改めて実感したのだろう、自分に味方をしてくれたことや、守ってくれたことに感謝するしかできない。
< 200 / 580 >

この作品をシェア

pagetop