エターナル・フロンティア~前編~
「苦労した分、これから楽しめばいいのよ」
「そうよ! 邪魔者はいなくなったのだから」
無論、イリアにはそれを行う権利があった。今まで苦労してきたのだから、それを取り返さないといけない。念願の就職先に、ユアンと共に仕事が行える。これからの明るい人生に、イリアは満足する。
「これって、御褒美ってやつかな?」
「それも、考えられるな」
「それなら、羨ましいって言えないわ」
「アカデミーの生活は、最悪だったからな」
ユアンが勤めている研究所に就職したということで、仲のいいクラスメイトの間にもやはり嫉妬のようなものが存在していた。しかしこのように考えてしまうと、嫉妬してはいられない。
それどころか「可哀想」という感情が、全員の心の中に湧き出してくる。同情によって生み出された、何とも表現し難い雰囲気。すると堪り兼ねた一人が、ポンっと手を叩く。そして、ひとつの提案を投げ掛けた。それは今から全員で、食事に行こうというものであった。
「どうだ?」
「そういえば、お腹空いたわ」
「よし! 決まり」
「イリア行くわよ」
そのように言うとイリアの手を掴み、引っ張って行く。唐突な出来事に、イリアは何も理解できていない。しかし周囲は関係ないとばかりに勝手に話を進めてしまい、目的地に連れて行く。
周囲にいた者達はアカデミーに不似合いな光景に驚くが、一部の生徒は彼等の正体を理解したのだろう、クスクスと笑い出す。そして店に到着後、賑やかで楽しい食事が開始された。
◇◆◇◆◇◆
クラスメイトとの食事後、イリアはトボトボと歩いていた。特に目的もなく、ただ帰宅の途につく。数年間、この生活を続けてきた。朝アカデミーに向かい、日が落ちた頃に帰宅をする。
だが、卒業後は生活が一変する。就職先で懸命に働き、様々な研究を行う。それが夢であったが、何故か空しいものが感じられた。それがどのような意味合いなのか、イリアはわかっていない。しかし望んでこの世界へ行くことを選んだのだから、迷いは存在しなかった。