エターナル・フロンティア~前編~

「二週間後――」

 クラスメイトと決めた卒業旅行は、二週間後ということであった。急遽決められた内容の為に遠くに行くことはできないが、仲が良い者同士、近場での旅行であったとしても楽しいことは間違いない。

 何より、あの二人いないことは天国に等しい。リゾート惑星でバカンスを楽しんでいたとはいえ、同行していた者達の性格が最悪なので何ら感情は湧かない。しかし、今回は心の底から楽しめる。イリアにとっては喜ばしい内容であったが、旅行に関して一番大事なことを思い出す。

 それは、金銭面の問題。今回もそれで悩むことになろうとは、思いもしなかった。楽しい卒業旅行に行きたいが、肝心のお金がない。それなら素直に諦めた方がいいが、イリアは楽しい思い出も残したかった。何が何でも旅行に行きたいが、こればかりは避けられない。

 両親から借りる。

 だが、卒業旅行に行ったばかりなので、不機嫌な表情を見せるのは間違いない。だからといって、ソラに頼むことはできない。卒論の件でも断られたというのに、今回は流石にプライベートすぎる。こうなれば一か八かで両親に頼むしかなく、イリアは大きく頷くと駆け足で自宅に向かった。




 自宅に到着したと同時に、父親が寛いでいるリビングに向かう。そして友人との約束を話し、金を貸して欲しいと頼むが、父親ダニエルの眉がピクっと動く。その反応にイリアは、父親と視線が合わせられない。

「この前、行かなかったか?」

「今回は、別の友人と」

「友人が多いな」

「研究もしているから」

 その言葉に無言で頷くと、ダニエルの顔色を伺う。先程とは異なり、真剣な表情を浮かべていた。

「何処へ行く」

「そんなに、遠くには……別の惑星には、行かないわ。他の人達もそうだけど、そんなに余裕が……」

「そうか」

 それを聞いた途端、安心したのだろうダニエルの表情が緩んでいく。すると夫と娘の話を静かに聞いていた母親ヘレンが、奥から姿を見せる。それと同時に友人との卒業旅行について、意見を言い出す。どうやらダニエルと違い、ヘレンは二度目の卒業旅行が気に入らないらしい。
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