エターナル・フロンティア~前編~
ソラの性別が女性であったら、クリスは間違いなく告白していただろう。それくらいソラは家庭的で、男性にしておくのは勿体ないほどだ。また、優しく他人を思い遣られる点も大きい。
「何を作るのですか?」
「肉料理」
「タツキらしいですね」
「男らしい食事だ」
ソラはタツキの性格を熟知しているので、同意するかのように頷く。二人は同胞同士なので、迷いはない。また、タツキに関して相談を行える無二の親友関係というべきか。タツキに指摘を行えば手が飛んでくるのだが、ソラは違う。全てを受け入れ、賛同してくれる。
「それなら、野菜が必要です」
「あいつは、食うかな」
「食べさせないと、健康に悪いですよ。野菜は炒めてしまえば、量が減りますから。それを利用して、食べさせてしまいましょう。味付けを様々に変えれば、タツキは食べてくれますよ」
「そうだな」
二人は料理を得意としているので、瞬く間の内にメニューが決まっていく。作る料理の決定後は、必要な材料を購入しないといけない。だが、途中で籠が山盛りになってしまう。あれこれと決めていくうちに食材の量が多くなってしまい、流石にこの量全てを購入するわけにはいかない。
「少し、戻しましょうか」
「それがいい。あいつ、冷蔵庫の中で物を腐らすようだ。女とは思えない、生活スタイルだ」
「タツキらしいです」
「現に、調味料が固まっていた」
「……やっぱり」
「やっぱり?」
「いえ、昔……」
タツキの自宅の冷蔵庫を掃除したのはクリスだけではなく、実はソラも行った経験を持つ。だからクリスの気持ちは痛いほど理解でき、いまだに調味料を駄目にしていることに頭痛を覚える。
相手が顔見知りの場合、タツキは容赦しない。それも尋常ではない内容を注文し、時として肉体労働を行わせる。そのひとつが建物の清掃であるが、そもそも時間を見つけて自分で行えばいい。だが、タツキは行うことはせず「面倒だから」この言葉で、片付けてしまう。