エターナル・フロンティア~前編~

 だからこそ、タツキは質が悪い。それなら素直に文句を言えばいいが、タツキを敵に回すことはできない。第一に反撃が恐ろしく、あの馬鹿力で殴られたら命の心配をしなければいけない。それは大袈裟な言い方であったが、そのように思わせるほどタツキの攻撃は怖い。

「インスタント食品でいいか」

「タツキは、滅多に料理を行いません。ですから、それでいいと思います。料理を作る時は、買出しをすればいいですから」

「それが、俺達の仕事のようなものか。何だか、家政婦だな。ここまで働いていると、金が欲しくなる」

「仕方ありません」

 どのように足掻いたところで、タツキが進んで料理をすることはない。現に、高い腕前を持つクリスがいる。何か美味しい物を食べたいと思えば彼を呼び出し、作ってもらえばいい。

 それが無理なら外食にすればいいので、結局のところ作らなくても生きていくことができた。そのことがタツキの生活面をだらしなくしてしまい、彼女は最高の環境に恵まれていた。

「あれで、健康体だから不思議だ」

「でも、いつかは悪くなりますよ。タツキだって、不死身ではないですから。一応、生身です」

「生身でなければ、恐ろしい」

「そうですね」

 その言葉に続き、溜息が漏れた。タツキに振り回されることは、正直辛く苦痛に近かった。男同士の悩みは思った以上に深く、この場が酒場であったら愚痴を言い合っていたに違いない。

 ソラはタツキに恩を感じているが、全てを受け入れられるわけではない。流石にこのような私用は、勘弁してほしい。自分でできることはやって欲しいが、タツキは言うことを聞いてくれない。

「濃い目の味付けにしましょうか」

「それ、いいな」

「多分、気付きません」

「確か、あいつの料理は――」

「最悪です」

 クリスは一度だけ、タツキの料理の味見をしたことがあった。その時の正直な感想は「不味い」の一言で、食べられるものではない。あれは、味オンチや味覚馬鹿というべきものだろう。酷い味付けで舌が麻痺寸前に陥り、数日間味覚が使い物にならなくなってしまった。
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