エターナル・フロンティア~前編~
タツキは特に濃い味付けは気にせず、それどころか平気な顔をして食べているだろう。クリスは、そう確信していた。相手がそれなりの人物であったら、真面目に料理を作るに違いない。
「女性で味覚馬鹿というのは、最悪な組み合わせだな。何と言うか、涙が出てくる気分だよ」
「将来が心配です」
「そう思うか」
「思いますよ」
「まあ、あれを見たらそうだな」
ソラの言葉に、クリスは何度も頷く。同時に、タツキとの会話を思い出す。「結婚するかしないか」それはタツキの身を心配しているからこそ言った言葉だが、本当は自身の身を心配しないといけない。
それを言葉の意味合いを代えて、タツキへ質問をして投げ掛けていた。クリスはタツキを心配する前に自分の身を固めないといけないのだが、いかんせん特定のいい人物が見付からない。
ソラは、クリス以上に苦しい生活を送っている。その人物に幸せの意味合いを聞いた、酷なことだ。からこそ、口をつむいでしまう。そして、話を違う方向へと持っていくしかない。
「ところで、何を買いに来たんだ」
「雑貨類です。もう、購入しました」
「独り暮らしは、大変だからな」
「大変ですよ。全てを行わないと、いけませんから。それなのに、普通に暮らしている人もいますが」
その言葉が示しているのは、タツキしかいない。彼女の場合は、周囲がシッカリしているからいいのだろう。ソラやタツキがいなければ生活面は褒められたものではなく、きっと堕落していただろう。そのように考えればタツキは幸せ者で、知人や友人に恵まれている。
「それは、タツキだな」
「勿論です」
「では、そのタツキを待たせてはいけない。支払いをしてくるから、少し待っていてくれないか」
「出入り口で、待っています」
ソラからの言葉を受け取ると、クリスは支払いを行う為にレジへ向かった。その後ろ姿は、まさしく主夫に等しい。将来、良い夫になるに違いない。クリスは、その資質を秘めていた。そして優しいクリスと結婚した相手は、理想の結婚生活を送ることができるだろう。