エターナル・フロンティア~前編~
このような人物だからこそ、結婚相手は性格を優先しないといけない。やはりクリス同様に、素晴らしい相手がいいだろう。我儘な性格の持ち主であったら、クリスが可哀想になってしまう。しかし、それは難しい相談。それなら、研究所に勤めている大半の女性は――
例の場所で働いている人物の全てが、クリスと同じ考えの持ち主ではない。どちらかといえば、世論に比例していた。そのような相手と結ばれたら、彼は苦労をしてしまう。ソラは二人の幸せを願っていたが、二人にしてみればソラの幸せを優先してほしいと思っていた。
だから、自分達の幸せは二の次。苦労が絶えないソラの支えとなるのは必要となるだろう。だが、本当の意味で支えとなるのはタツキやクリスだけではなく、本当に愛してくれる女性が必要だ。
(……賑やかだな)
行きかう人々の流れに、視線を走らせる。それは何気ない仕草であったが、視線の中には多くの人物が入ってきた。行き来している者の年齢に統一感はなく、性別も様々。それでも、ひとつだけ共通している部分が存在した。それは人々が浮かべる表情で、どの顔も皆、とても明るい。
彼等は日々の生活に満足しているのか、それとも偽りの仮面をつけているのか。それは本人に尋ねなければわからないことであったが、力を持つ者よりは幸せと感じているのだろう。
もしソラの立場が知られたら、大騒ぎになってしまうだろう。そして罵倒が飛び、彼自身を非難する。立ち尽くしていようが、彼等には関係ない。犯罪を起こす起こさないは意味をなさず、迫害の対象と成す。人々にとって能力者は人類の敵で、全てが消え去ればいいと思っている。
だからこそ、口をつむぐ。言葉に出してはいけない。ただ普通の人間として振る舞い、日々の生活を送る。そして、信頼できる相手のみに心を許す。今のところ、その人数は少ない。
「お待たせ」
「早いですね」
「レジの性能がいいから、早いぞ」
「そうですね」
「発展した文明は、有難い」
「それはわかります」
それは他愛ない会話であったが、文明水準の低い地域を知っている者にとっては、意味深い会話であった。どっぷりと高水準の文明に浸っていると、それより劣る場所へ行った時、必ず苦労する。これこそ人間本来の生き方だと説明されても、我儘を言う者が多いという。