エターナル・フロンティア~前編~

 人間の文化文明は、一足飛びで成長したわけではない。様々な過程を経て今の水準に至ったのだが、大半の者はそれを認識していない。だからこそ野蛮や低水準と文句を述べていくが、凝り固まった思考では正しい事柄を見出せない。見出せないからこそ、特定の概念を押し付ける。

 それが悪いわけではない。

 時として、その中に邪念が混じる。

 それが、この世界の現状。

 まさに、盲目的な思考であった。

 だが、全ての者が悪と決めつけていいものではない。このように、普通に付き合ってくれる人物がいるのだから。それはとても有難いことで、多方面から物事を見ることができる。本当に頭がいいというのは、このような人物を示す。また、知識だけで全てを図れるものではない。

 その者が歩んできた人生と、物事を見る力。正直、カディオは頭がいいとはいえないが、相手の感情を読み取ることは上手かった。だからこそ、ソラが感じている苦しみを知ることができる。

 能力者と付き合うべきなのは、このような人物だろう。だからソラは気さくに接してくれる人物を大切にし、時に相手に向かって毒を吐いたりする。その間に、余所余所しさは感じられない。

「本当に、有難いです」

「でも、のどかな場所もいい」

「観光地ですか?」

「まあ、そのようなものだ」

「行きたいですね」

「行くか?」

 何気ない言葉の返しであったが、クリスはそれに瞬時に食い付いてくる。予想外の反応にソラは目を丸くすると、本気で行くのか尋ねてしまう。するとクリスは持っていた紙袋をソラに手渡すと身振り手振りで説明をはじめ、旅の素晴らしさなどを熱く語っていくのだった。

「青い海に白い雲。それに、水着の美女」

「はい?」

「ソラも大人なのだから、水着の女性に――」

「場所を考えてください」

 顔を赤らめながら、小声で呟く。そのことに初々しさを感じ取ったクリスであったが、周囲から痛い視線を感じ取る。どうやら「水着の美女」という単語に反応を示したのだろう、口々に噂話をしていた。その声が更に羞恥を招いたのだろう、ソラは耳まで赤く染めていた。
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