エターナル・フロンティア~前編~
「水着の美女は、いいものだぞ!」
「オレは、違いますよ」
「いや、それはわからない。個人の好みなんて、途中で変わるものだ。だから、ソラだって……」
「なら、タツキは?」
「そ、それは……」
「男っぽところもありますが、タツキも女性です。ですので、タツキの水着姿はどうですか?」
「あ、あいつは……」
タツキの名前が出た瞬間、クリスの全身は硬直してしまう。タツキの水着姿――それを考えた瞬間、顔面の血の気が引いてしまった。同じ異性だというのに、タツキは別人と思ってしまう。どうやら想像してしまった結果、気分を悪くしてしまい、その場で座り込んでしまう。
過度の想像は、身を滅ぼす。思考停止寸前のクリスは、呻いてしまう。タツキの体型は悪くはないが、相手がタツキというところに問題点があった。水着姿と同時に思い出されるのは、あの性格。水着の美女は優しくないといけないという固定概念を有しているので、タツキは範囲外。
「……気分が」
「過去に、何かありましたか」
「聞くか?」
「い、いや……ちょっと……何と言いますか、経験上タツキに絡むことはいいことがなく……」
「それが、賢明だよ」
曖昧な言い方をしているクリスに、ソラは本能的に「聞いてはいけない」と、判断を下す。しかし、何があったのか――その理由を知りたいという気持ちは存在した。一体、二人の過去に何があったというのか。それは一種の禁断の箱で、ソラはその箱を開ける勇気はない。
「……嫌なことを思い出した」
「そ、そんなに凄いことが」
「聞くか?」
「ですから、いいです」
「……残念」
言葉で「聞くな」という意思を示していたが、内心は話したい気持ちでいっぱいであった。その証拠にソラが断った瞬間、悔しそうな表情を見せていた。同じ記憶を有する者――それが欲しいのか、視線で何か訴えている。だからこそ、ソラはクリスの言葉をキッパリと断った。