エターナル・フロンティア~前編~

「では、タツキの家で」

「時間では、ソラが先か」

「混雑する、時間ですからね」

「先に着いたら、タツキに連絡して欲しい」

「わかりました。それでは――」

 互いに交わされたのは、一時的な別れの挨拶。ソラがバイクに跨るのを確認すると、クリスは乗車する。そしてそれぞれの方法を取り目的地に向かうが、二人の心情は複雑であった。




「――という訳です」

 タツキの自宅に到着したと同時に、ソラはクリスと交わした約束に付いて話していく。最初は目を丸くしていたタツキであったが、素直に受け入れる。いや、彼女は受け入れるという選択しかない。何よりソラの訪問は嬉しく、両手を広げて抱き締めてしまいたいが何とか堪えた。

 今はソラの手料理を食べたいので、可愛いという愛情表現は後ですればいい。しかし、その表現は時として暴走する。タツキが手加減をしなければ、ソラの骨は折れてしまうだろう。

 タツキから発せられるオーラに、ソラは本能的に危険を察する。それに続き、一歩後退してしまう。そして内心、クリスが早く到着して欲しいと願うが、なかなかクリスは到着しない。

「あら、どうしたの」

「な、何でもないです」

「逃げなくてもいいのよ」

「い、いえ……そ、それは……」

「何もしないわよ」

「だけど、昔……」

「あの時はあの時よ」

 と、言われたところで素直に信用できるものではない。過去の経験上、このように言った時が一番危ない。その時、クリスとの会話を思い出す。それは悪夢に等しい内容で、気分が悪いということはないが想像していいものではない。何故、今思い出したのか――ソラの頭は、混乱してしまう。

 クリスから話を聞かなかった方がよかったと激しく後悔してしまうが、逃げ出すことはできない。それにいまだにクリスはが到着する気配はなく、渋滞に捕まってしまったのか、内心「早く到着して欲しいと」と、心の中で願ってしまう。それほど、タツキとの話には苦痛が伴う。
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